チェリー、天板

板目2枚ハギの共木の天板。
オイルを塗布してしばらく染み込ませ、ウエスで拭き取ると浮かび上がってくる饒舌すぎる木の表情にしばし手を止めて、思わずうっとりと眺めているところ。
一本の丸太から製材した板だけに、色味も同じ、木目も同じ、いわゆる共木(ともぎ)というこれ以上ない贅沢なつくりで、がんばって仕事を続けていればこうした出会いもあるのだとあらためて感じている。
天板向かって左の方を見るとハギ合わせたところがちょうど木表、木裏のブックマッチになっているので、光の反射具合でどこでくっつけたのか一目瞭然だ。しかし、それもまた共木であれば決して不自然ではない、新しい木の面白い表情にもなる。
それにしてもだ、明るい漆を塗って仕上げたようなこっくりとした味わいの色合いだ。西日に照らされて、きらきらと光を受けて反射する木の繊維の輝きは、もはや地上の宝石と言ってもよいほどに希少かつ貴重なもので、そんな自然が作り出した造形を切り刻んでかたちにする責任やプレッシャーもあるけれど、それよりもなによりも、無駄にしてはいけない、使えるものに仕上げなくてはいけないと、刃物を当てるたびに自分を言い聞かせて制作に向かった。

実際に制作するにあたっては、板が杢だけに鉋がけの際はならい目さか目、ならい目さか目と連続して削ってゆくことになるので、いい加減な気持ちで仕事をしていると陥没するほどの逆目がすぐに起きてしまい、プレーナーなどの機械加工はもちろん、横ずりの段階から刃口も裏刃も寄せて神経を使う作業になった。

仕事始まってます。

材料を刻み始めるにあたり、まず一番に取り掛かる仕事。
鼻切りといいます。
砂が噛んでいることが前提の木口ですので、赤いスプレー部分はもったいないと感じるかもしれませんが切り落とします。
この作業をせずにそのまま機械に入れると一度で刃物がダメになるからです。

切り落とした木口をよく見る。
表には見えない木口割れがまだ入っていないかどうか確認したり、木の生育過程や硬さ、色味といった木味(きあじ)がわかるので必ず確認します。

小型丸ノコもコードレスの時代へと移り変わってゆくのでしょうか。
誤ってコードを切断して仕事が中断することはなくなると思いますが、便利さと引き換えに何を失っていくのか見極めないといけない。メーカーの囲い込み作戦に巻き込まれたくない気持ち半分、充電池を買い続けることが果たして明るい未来なのか疑問半分のままです。

天気の良い日、西日が差し込む午後5時過ぎ。
木目を見て、白太の具合を見て、実際に部材として取れるかどうか、取れたとしてもそれが全体のなかで調和を欠いていないかどうか、天然ものであるがゆえに素材との対話が欠かせない。
夏至に向かってだんだんと日が長くなってきました。

ウォールナット、再び

写真は昨年末にお客様のもとへお届けした、二枚ハギのウォールナットのテーブル用材料。
太い丸太を製材して、二枚の板をあたかも本を開くようなかたちで板を合わせることをブックマッチと呼ぶのですが、多少の節とうねりこそあれブックマッチで贅沢に仕上げた天板になった。
頑張った甲斐があってとても気に入っていただき、年明けにもうひとつ注文を頂いた。

制作途中の様子。
既存脚部との関係で反り止めの桟が内側に寄り、しかも短くなってしまうので、普段あまりやらない寄せ蟻にした。

はぎ合わせの桟。
たかだか5センチほどしか叩けないし、木が柔らかいこともあって勾配はつけずにストレートで入れた。

傷つかないように当て木をして、重い玄翁で少しずつ叩いて任意の位置まで追い込みます。

塗装してみる。
見ての通り、前回の板と比べると、節やら割れやら芯やら白太やら、もうこれ以上ないくらい木の表情がてんこ盛りになっています。
向かって右側の板に中央付近まで埋め木がしてあるのが確認できるでしょうか。
そうです、割れていたのです。

肝心のオモテの様子。
今回は板があまり良くないことを承知していただいたものの、ゴジラかキングギドラが火を噴いたようなワイルドすぎる木目で、しかも共木の板とはいえ芯持ち割れすぎの板でなかなか手ごわい仕事でありました。
ブックマッチにするとあまりにも木目のバランスが悪く、あえてそれを避けて矧ぎ合わせた。

向かって左側の板は特に芯割れがひどく、切り落とした端材からもわかるように、すがすがしいほどの状況でした。

割れを修正した箇所、木口の処理。
まず天板の裏側に深く埋め木をして、その後木口をあらためて埋め木してから表を三分の一ほど埋め木した。
木目も合わせようと試みるが、やはり見れば気づく。

高分子イソシアネート系という白い接着剤を使うのですが、ウォールナットくらい色味の濃い樹種は木口の導管に入り込んだボンドが塗装をしたあとでうっすらと浮かび上がってきます。
どうしたって何をしたって入り込んでしまうので、いっそボンド自体に何か着色して色をなじませた方が目立たなかったと思います。

チギリ三連発。
深さは14ミリほどの浅いもので、大きな穴を隠すいわば飾りの化粧です。

やわらかいウォールナットで良かった。
輸入材を扱うことの是非もあるけれど、はるばる自分の手元にやってきた材料くらいは、せめて無駄死にさせることがないようにといつも心がけている。