リンゴマーク、あれこれ

つい先日のこと、京都にある接着剤屋さんにインターネットでボンドの注文をしている時、ノートパソコンに電気を供給する四角いプラスチックの部品から電線がショートするような「パチパチッ、ジジッ、、」と実に嫌な音がした。
あれ?と思い充電状態を知らせるLEDのランプを見ると、案の定消えている。気のせいかもしれないが、何か焦げたような不吉な匂いもした。ひょっとしてパソコンが壊れたのか、それとも電源アダプターが壊れたのか瞬時には判別できなかったのだが、コンセントを押しても引いてもランプが点かない。
給電が出来ないのだから充電池が切れたらパソコンがそれっきりになる。

電気を節約するためにノートパソコンを閉じて、メインで使っている古いデスクトップパソコンを立ち上げて、何のサポートもしなくなった古いブラウザでリンゴマークのアップルストアを覗いてみる。
もたつく挙動になんとか対応機種の充電用電源アダプターを見つけるが、驚いたことに税別ひとつ8,800円もするので卒倒しそうになった。ただのコンセントなのに、、、。
あらためて気持ちを切り替えて、今度はジェフ・ベゾス率いる帝国、アマゾンでサードパーティー製の代替え品がないかどうか根気強く調べてみると、なんと純正品と較べて1/5程度の値段で売られている商品もあり、おいおい、林檎ボッタクリだろ!と腹が立ってしまった。

困ったな、、、従順なリンゴ信者になって純正品を買うべきか、それとも安かろう悪かろうのどこぞの国でつくっているのかもわからないバッタもんを勇者のように買うか、、、なるべくお高いリンゴは避けようとパソコンの周辺機器は非リンゴで貫いてうまくやってきたのだが、よせばいいのに悩みに悩んだ。
しかし悩んでいても一向に物事は進展しないので、強気な値段だけどしょうがない、何かあった時の一年保証付きの純正品を結局アップルストアにひとつ注文した。
木工機械を自分で修理して電源につなぐ時の電気の恐ろしさを知ってしまったのも、その理由の一つでしょうか。

サブで使うパソコンとはいえ、インターネットがないとやっぱり不便だよなぁとぼんやり思いながら過ごしていたのだが、驚いたことに注文をした翌日の午前9時過ぎにはヤマトのいつものお姉さんが届けてくれた。異常なスピードである。
注文から24時間も待たずに自分の手元に届くのが当たり前だなんて思いたくない。

新しく届いたものであっけなく充電できるようになり、使えなくなったパーツを意味もなくバラしてみる。
充電中はかなり熱を発するのだが、基盤がアルミの遮熱板に包まれて、中はスシ詰め状態だ。半田付けした部品がグラグラしないように堅いシリコンで隙間を充填しながら固定されている箇所もある。
悲しいかな何の部品か一つとしてわからないのだが、一時が万事、パソコンも電話の中身もこんな風に細かいパーツでギッシリ詰まっているのだろう。

基盤の裏側。
遥か海の向こうで誰かが設計をして、そのまた遥か海の向こうの大陸で誰かがつくっていて(細かい作業ご苦労様です、、、)そのまた向かいの島の人間が、いびつに歪んだ世界だと思いながら能天気に200匁の玄能で叩いて割っている。

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漆の仕事を振り返る

木裏からプレーナーをかける。
多少のねじれがあるので、ストレートエッジで傾きを確認しながら平面を出してゆく。

なるべく板の長さを優先するため、落としきれなかった木口割れを手当てする。
裏側から板厚の1/2〜2/3ほど彫り込み、蝶ネクタイ型のチギリを入れる。

旋盤のみ。

親指ほどの太さのスピンドルガウジがいつも足りないと感じているので、今度こそは買うと決めた!
いっぽう一番大きいスクレーパーの出番は、残念ながらほとんどない。

中には削っている途中で節っぽい箇所も出てきますが、これは使えません。

真ん中の脚部は通しほぞにしたので、現物でバランスを見ながら図面よりも少し太めの直径にした。
胴付き部分の深さは浅いところで約2ミリ。

摺り漆をして、出来上がり。

あんまり重苦しくならないように心がけて手を動かしていても、
やはりというべきか、角度を変えて見れば摺り重ねた漆が醸し出す独特の腰の重さというか、存在にぐっと厚みが出る。
ひと言でいうと、重厚だ。

最後の仕上げ用にと用意した日本産の生正味漆200gチューブもあっという間に使い切るような大きさでした。

続 漆の仕事

艶も上がってきて素晴らしい木目が現れてきたのだか、ここは木目ではなく、やはり杢(モク)というべきなのだろう。
木の繊維に光沢がある樹種は特に顕著なのだが、見る角度によって妖しく光を反射して、摺り漆が木の魅力を最大限に引き出してくれる。
自分で仕事していてバカみたいだが、うっとりするような恍惚感に浸る瞬間がある。

研いで、塗って、拭き取って、そして乾かして。
文字にすると、たったそれだけの事なのに、入り組んだ箇所が多いと想像以上に時間がかかる。
とにかく、清潔感のある仕上がりを心がけよう。

漆の仕事がはじまる

ベンチの制作。
材料はミズメ。硬くもなく、柔らかくもなく、カバノキ科なのにサクサク鉋がかかって扱いやすい木だ。

長手方向で約2メートルあり、人が座っても座面が垂れてこないように6本脚になっている。
脚部と貫の接合部はデンマークの巨匠ハンス・ウェグナーの椅子によく見られる定番の収まりですが、一点ものだと治具を制作して、試し加工をして、微調整して、これを何度か繰り返したのちに本番加工に移るので、ひどく時間がかかってしまう。
全体のバランスを見て感覚的に決めた貫の厚みと同じ径のルータービットだって必要だ。

制作中の一コマ
仮組みして、吸い付き桟の両端が平ホゾになっているので、上から落として接着する構造。

漆の仕事をするときは毎回ベニヤで適当に間に合わせて、随分なおざりにしてきた定盤ですが、今回ちゃんとしたものをつくろうと思い立ち、まずはヒノキの小割で芯をつくり、、、

厚突きのポプラを芯の繊維方向と直交させて貼り合わせ、その上に仕上げ材のナラをサンドイッチして天板をつくる。
自分でつくるベニヤですね。

作業台の上でサビを練ったりする仕事なので、結局金属の仕事で使うようなかたちにした。

木地固めしてみる。
側を石畳組み継ぎしてみたものの、天板との接合部がかえって複雑になってしまった。
留めにしたほうがスッキリしたと思う。

さあ、これから制作したベンチの大きさに合わせた風呂をつくって、どんな天気であっても湿度と温度のコントロールができる状態になるまであらゆる準備が必要だ。
3月になって随分春らしくはなってきているけれど、昼と夜の寒暖差もあるので、漆の美しい仕上がりを求めるならば、やはり神経は使う。

ウェンデル・キャッスルさん

木工というフィールドからハイアートの世界に向かったアメリカ人、ウェンデル・キャッスルさんが20日亡くなった。85歳。
木を削って何かつくる作家の中ではもっとも商業的に成功した人ではないだろうか。どのジャンルにも属さない木の家具(もしくは彫刻)をつくる唯一無二の存在で、影響を受けた日本人も少なくないはず。

僕にとっては好きも嫌いもない、木工という険しい山の先端で光輝く石のようで、すごいなあ、、、と溜息をつきながら眺めるだけの人でした。

設備を紹介する記事。
7台のバンドソー、4台の手押しカンナ、3台の自動カンナ、4台のテーブルソーなどの、個人の工房ではありえないスケールにも驚いたが、最近ではロボットも導入していたようで再び驚いた。

https://www.democratandchronicle.com/story/local/2018/01/21/renowed-rochester/1051863001/

上記URLはHOCK TOOLSのロン・ホックさんからのリンク。

今朝の浄土のような雪景色も手伝って、静かでシンとした気持ちになる。