• 動画撮影、その一

    つい先日、不思議なご縁があって自分の仕事の様子を動画撮影していただいた。
    ユーチューブである。
    制作風景とインタビューを撮ってもらい、それを持ち帰って後日編集していただき、完成したものをのちのち公開する予定で、果たしてどんなかたちのものになるのか、気分はすっかり俎板の上のコイ状態である。
    本当のことを言うと、お話を頂いてからあれやこれやとあてもなくいろいろ考えて、普段取りかかっている仕事の段取りも毎回ギリギリで余裕がなく、ただ時間だけが過ぎてゆき、結局のところ、自分の宣伝や格好つけたセルフブランディングよりも何よりも、撮影してくださる方のキャリアアップや夢の実現に微力ながら協力できればと思い至り、恥ずかしいカッコ悪いを全部かなぐり捨てて、素っ裸のふんどしすら脱ぎ捨てた気持ちで引き受けたところがある。至人は己なしの高みは果てしなく遠いのである。

    その後何回かメールでのやり取りがあり、いざ撮影となったら日にちは思いのほか急転直下で決まり、そうだよな、、、東京からわざわざ大型の三脚や重いケーブルやら照明やら、全部ひとくくりにまとめてせっかく工房まで来ていただくのだから、できる限りの準備をしよう、無駄足にならないように効率よく撮ってもらおう、と、あたふたと時間に追われたけれど、当日待ち合わせたJRの駅でお会いしてみれば、あれ?と思うほど身軽ないでたちで、テニスの試合に持っていくようなカバンひとつだけだった。
    まさか肩に担くようなテレビ局のカメラではないとぼんやり想像していたものの、その撮影機材のコンパクトさに驚き、工房に着いてやおらカバンから取り出したのはなんと、ソニーの小さなミラーレス一眼だった。
    へえと感心して聞くと、今はこちらの方が主流とのこと。時代は確実に変化しているのである。

  • チェリー、天板

    板目2枚ハギの共木の天板。
    オイルを塗布してしばらく染み込ませ、ウエスで拭き取ると浮かび上がってくる饒舌すぎる木の表情にしばし手を止めて、思わずうっとりと眺めているところ。
    一本の丸太から製材した板だけに、色味も同じ、木目も同じ、いわゆる共木(ともぎ)というこれ以上ない贅沢なつくりで、がんばって仕事を続けていればこうした出会いもあるのだとあらためて感じている。
    天板向かって左の方を見るとハギ合わせたところがちょうど木表、木裏のブックマッチになっているので、光の反射具合でどこでくっつけたのか一目瞭然だ。しかし、それもまた共木であれば決して不自然ではない、新しい木の面白い表情にもなる。
    それにしてもだ、明るい漆を塗って仕上げたようなこっくりとした味わいの色合いだ。西日に照らされて、きらきらと光を受けて反射する木の繊維の輝きは、もはや地上の宝石と言ってもよいほどに希少かつ貴重なもので、そんな自然が作り出した造形を切り刻んでかたちにする責任やプレッシャーもあるけれど、それよりもなによりも、無駄にしてはいけない、使えるものに仕上げなくてはいけないと、刃物を当てるたびに自分を言い聞かせて制作に向かった。

    実際に制作するにあたっては、板が杢だけに鉋がけの際はならい目さか目、ならい目さか目と連続して削ってゆくことになるので、いい加減な気持ちで仕事をしていると陥没するほどの逆目がすぐに起きてしまい、プレーナーなどの機械加工はもちろん、横ずりの段階から刃口も裏刃も寄せて神経を使う作業になった。

  • 先月の仕事

    今からもう11年近く前、福島県の旧館岩村のオグラさんでヤマザクラの原木を購入した。
    曲がりと少しねじれのある、直径も45センチほどの小ぶりな丸太。
    製材機に入れる前にどの方向から挽いていくか、手術台に載せられたような丸太をゴロゴロと転がしながら、右から左から曲がりの向きや節の有無、木口割れの入り方をじっくりと観察する。
    個人工房のような少量しか買わないお客でも、ものづくりに理解のある材木屋さんなので足蹴にされないのは本当にありがたい。

    9分(27ミリくらい)ほど挽いて、まず白太。
    帯鋸で挽くたびに表情を変えてゆく木目に一喜一憂しながら、大型機械を操るハンドルマンに厚みの指示をお願いします。
    丸太自体の太さがないとはいえ、テーブルや箱ものの天板にできるようなきれいな木目の板がほしいと神頼みするような気持ちになる。

    ひととおり製材を終えたところ。
    水分を含んでいるので、薄っぺらい板のように見えるが、実はどれもずっしりと重い。

    天然乾燥のあいだに樹皮や白太の部分はテッポウムシと呼ばれる小さなカミキリ虫の幼虫に最終的に食われる運命にあるのだが、被害を最小限に食い止めるためにも樹皮は必ず取り去らなくてはならない。
    工芸やハンドクラフトと呼ばれるものづくりの命でもある材料がどこから来るのか(特に木工は素材がそのまま仕上げになるジャンル)斧を担いで山に入ることは出来ないにしても、できるだけ上流に遡ってみる必要は大いにあると考えている。

    このあと木材割れ止め防止塗料、ランバーメイトを木口と板の真ん中に塗り、風が抜けるようにきれいに桟積みして、天然乾燥で4年、その後人工乾燥機に入れてから工房まで送ってもらい、さらに6年保管した。
    ふう、気が長いなあ。
    どんなものになるのか、あるいはどんなものにするのか全く決まっていない状態の材料をストックするのは、木工ほんらいのあり方であり、かくいう自分もそんな風にしながら木工という仕事が続けられたらと願うばかりであるが、とにかく仕事に余裕がないと出来ない事である。
    贅沢な願いだろうか、それとも単なるわがままだろうか。

    昨年に制作依頼を受けて、ああそうだ、あの材料があったと在庫をひっくりかえして、ギリギリの幅で板が取れそうなことが判明し、今回サイドボードの制作をした。

    近頃の仕事としてホームページにもアップしました。

  • 見通しが良くなるように

    初めて老眼鏡を手にしてから2年が経過し、それ以来崖から転げ落ちるように一気に老眼が進んだと感じているのですが、そのうちメガネも三つに増えた。
    一番最初につくった眼鏡は仕事用と割り切って、細かい加工の時など調子良く使っていたのだが、いかんせん人生最初の眼鏡だったせいで後々いろいろと気づくことがあり、なんといっても一番の問題点はデリケート過ぎるフレーム形状だった。
    というのも、テンプル『つる』の部分があまりにも細すぎて、当然の帰結としてヒンジ部分も小さくなってくるのだが、仕事中はいい加減に扱っているせいかヒンジ部分がまず壊れた。

    ノギスで測るとテンプル部分の幅はわずか3ミリしかない。

    ニコン・エシロールのレンズ自体はとても良いのだが、、、

    修理から上がってきたヒンジはレーザー溶接された新しいものだった。
    3ミリ幅で蝶番を溶接するなんて、果たしてこれは職人技なのだろうか、もしくは機械の仕事なのだろうか?

    もう一つ気になった点はノーズパットの形状で、遠くを見る際にメガネを頭の上に乗っけた時、ほぼ間違いなく髪の毛がノーズパットに引っ掛かるのである。
    再び近くを見ようと眼鏡を戻す時、ノーズパットに髪の毛が1、2本挟まっていて引っ張ると痛くてイライラする。
    この形状のノーズパットは仕事用としては不向きと気づき、フレームと一体型になっているものを探し、近所のショッピングモール内にあるZoffの「吊るし」の老眼鏡を買った。

    もっと刃先を見たい時があるので、度数を一段階上げて+2.0にしたら、こんどは裸眼の時との落差があり過ぎて、眼鏡を外すと1メートル先もぼんやりして見えないような状態になるので、あまり手が伸びなくなった。

    次は度数を一段階落として、ドイツ製の廉価版眼鏡を買ったのだが、今度はレンズがおもちゃみたいなプラスチックの質感で、その質の悪さが眼球から伝わってくるようで、かけ心地というより見え心地が常に気になり頻繁に洗ったり拭いたりする始末である。

    眼鏡ストラップは洗濯ができる木綿のものが気に入っている。

    今年も老眼鏡の迷走は続きそうだけれど、できれば良い眼鏡を新調したい。

    新調といえば、追い入れ鑿を新調した。
    仕事すればするほど、研いでは使って研いでは使ってどんどん短くチビていく道具。
    つくってくれる鍛冶屋さんも減り、あの人か、この人かくらいになっている。

    鑿箱も新調しようと木取りも済ませて、部材の加工に入ったまま中途半端になっている。
    自分の道具を整えている時間がないのです。

    カエデの柾目のいいとこ取りでつくろうとしているが、果たしていつ完成することやら。

    以前、工房の外にFMアンテナを立ててラジオをずっと聞いていたのですが、それがいつの頃からかインターネットのradikoでラジオを聴くようになり、ipodからアンプに繋いでスピーカーに出力していて、一日中電源を繋ぎっぱなしでラジコやスポティファイを聞いていたせいか、ipodのバッテリーが膨張してきて(そもそも使い方を間違っている)、他の方法を考えていた。

    ハードに使い過ぎてホームボタンもパンツがずり落ちたようになってしまった。

    今はipodの代わりにアマゾンのエコーフレックスでラジコをつけている。
    もう発売しないのだろうか、とても気に入っている。
    3.5ミリのミニプラグから出力なんてオーディオマニアの人から見れば完全に子供騙しです。

    古いミニコンポで20年使っているアンプにエコーからRCAケーブルで入力している。CDプレーヤーは一度修理したものの、木ぼこりのせいでいつも挙動不審。

    ブックシェルフサイズの小さなスピーカーに繋ぎラジコをいつも聴いている。

    仕事のことを少し。
    昨年の5月に頂いた仕事。泣く泣く断った仕事もあるくらい、いろいろと声をかけていただき、2021年元旦まだ完成しておりません。
    これから引き戸を塗装して組み立てて、脚部の加工と旋盤、貫を組み立てれば完成です。

    かまちに組む引き戸の鏡板が幅広なので、上桟、下桟に突いた小穴の真ん中にさらにほぞ穴を開けて、ほぞ付きの鏡板にします。

    ヤマザクラ材、堅過ぎずやわらか過ぎず、カンナで削ると甘い香りがします。

  • 8月になってしまった。

    3月末から木取りを始めた仕事もいよいよ大詰め。
    同時多発的にいろんなことをしながら、やること盛り沢山の仕事でもいっこうに手が進まず、お客様に対して申し訳ない限りです。

    引き出し前板の裏側。
    底板用の小穴はカッターで落としきれない部分があるので最後は鑿で仕上げます。

    引き出しの側板

    箱物は小さくても大きくてもやっぱり部材が多い。

    接着。
    前板に傷がつかないように、厚紙を貼り付けた当て木をマスキングテープでクランプに留めている。

    接着の待ち時間に鍵加工を試してみる。
    一発勝負なので、何度も治具を調整してから本番に臨む。

    皿ネジで止める際は注意しないとヌルっとズレたりする。
    慎重に下穴をあけよう。

  • 45度のトメ加工は難しい

    接着のために、小さな馬(sawhorses木挽き台)もつくった。

    横倒しにして側板の仮組み。
    棚板に少し縦反りが出ているので、タテヨコでクランプを使う。

    側板、天板部分の接着はクランプが大渋滞して、いちばん力を加えたい仕口部分を締められない。
    実際に制作するにあたり、肝心の問題に直面するまでは難しいだろうなとボンヤリ思うだけで、事前に綿密な計画など立てていないことが案外多い。

    こうなったら最後の手段だ。
    当て木をじかにボンドで接着して、その当て木ごと締めてしまう計画だ。

    常識外れの非常手段だろうか、もしくは板材45度留め加工接着時の新定跡だろうか。
    仕上げたはずの側板、天板に接着した当て木を後からFクランプで圧締するなんて、、、。
    これなら正確に加工した45度部分を間違いなく確実に締め込むことが可能だ。
    本来の接着が終われば、役目を終えた当て木がくっついたままなので、時間はかかるが縦挽き鋸と鉋を使い元どおりに仕上げることになる。

    仮組み。
    狭い工房内での接着は危険がいっぱい。

  • 接着へ

    なるべくサンドペーパーを使わずに仕上げるように心がけていますが、2Rボーズ面を均一に仕上げるには電動工具でかたちをつくり、最後は#320のサンドペーパーで滑らかにします。

    サンドペーパーの当て木もいろいろ。
    青いポリスチレンを貼ったものがふんわり仕上げ用。コルクラバーを貼ったもの、カツラ、右下にある硬いサクラはあまり手が伸びません。

    いちばん手が伸びないのがサドルレザーを貼ったのもの。
    つるつる滑る感覚と、ぼんやりした抵抗感がそうさせるのでしょうか。

    サンドパーパーをサッとかけたら接着。
    プラスチックのヘラにウエスを巻きつけて、はみ出たボンドを拭きます。

    細かい話ですが、タテヨコふたつの部材が組み合わさった時の位置関係にいつも注意しています。

    ストレートエッジを当てて、平面を確認。

  • 留め加工

    見たことのない仕口だ。
    雇いの石畳留め継ぎとでも呼べばいいのだろうか。
    つくるものの大きさや構造、強度に精度、どこまで機械でやるか、どこまで手工具でやるか。
    時間をかけてばかりもいられない、しかし、後からみすぼらしくなるような仕事もしたくない。
    出来ることと出来ないことがある葛藤の中で、最善を尽くしたい。

    仮組み。

    鉛筆で当たっているところを印づける。

    反対側も。

    このわずかな隙間から、果たしてどこまで追い込めるか。

  • 仕口づくりの続き

    買ってきたばかりの道具なんて素材に過ぎない。
    自分で工夫して手を入れてこそ初めて自分の道具になると信じて、今から24年前に3,300円で買った面取り8分追い入れ鑿を無理やり改造したものがある。
    名のある人がつくった鑿で、桁が一つ違う33,000円であったとしても全く驚かなかったせいだろうか、問屋に安く叩かれてつくった鑿鍛冶屋さんの気持ちも考えずにグラインダーでガリガリ削ってしまった。
    反省もあるが、自分の道具にもなった。

    鑿の裏は面取ってはいけないタブーを犯して、糸面にしてある。
    あまりにも角が鋭利なため、こうしないと研いでるときに右手親指がパックリ割れて流血の騒ぎになるからだ。

    自作の横槌、山桜のマレットだ。
    重さの異なるものをもっと増やしたい。

    ルーターで落としきれなかった箇所を先程の鑿で落としてゆく。
    別に普通の角打ちでも全く問題ないのに、手が伸びるのは改造シノギ鑿だ。

    あらかた角を落としたところで、一度合わせてみる。

    もう少し削った方がいい箇所に印をつける。

    とくに端のホゾ穴はキツ過ぎずユル過ぎずぴったりと合わせたいので、型をつかって慎重に削る。

    ショルダープレーン。
    松、竹、梅で言えば梅クラスのかんなでしょうか。
    本来はほぞのショルダー部分、つまり胴付き部分を削るためのカンナで、その証拠に刃の仕込み角度が超ローアングル。
    そのカンナをつかってほぞの微調整する。
    金属のソールが木とこすれる感触はけっして心地よいものではないが、ついつい手が伸びる道具のひとつ。

    西洋のカンナなので、基本的に押して削る。

    何度も合わせてみて、ノギスで測った数字と実際の感覚を確認しながら微調整してゆく。

    ハタガネをかけて仮組みしてみる。
    胴付き面をがぴったりと合わさっているかどうか、平らに削った板が本当に平らな面になっているかどうか。

    さらに直角を確認できる道具、スコヤで確認する。

    地道な作業は続く。

  • 仕口づくり

    まずはホゾ穴をあけるための墨付け作業。
    インチじゃなくて、ミリメートルの定規がほしい、、、。

    鉛筆で線を引きます。

    シンワのストッパーは油断しているとずれることがある。

    けがきゲージ。

    H、HB、Bと芯の硬さが違う鉛筆を使い分けています。
    メーカーによる好みの書き味やデリケートな事はいっさい気にせず、単純に鉛筆に塗られた色だけ見て、何も考えずに手に取れるようにしています。
    赤青鉛筆も大好きで、芯が折れやすいのが玉に傷でしょうか。

    Hの鉛筆だけは繰り小刀で鋭利に削る。

    ほんのちょっと線を引くだけなのに、あれよあれよと道具が散らかっていく。
    出しては使って片付けて、出しては使って片付けて。これからもずっと続く、出しては使って片付けて。

    角のみ機を使うこともありますが、ルーターを使うこともあります。
    定規をあてがい穴をあけて、任意の厚みのスペーサーを噛ませてもう一度同じ作業を繰り返します。

    ホゾ部分の加工。
    現物に合わせて墨付け。

    あらかじめ胴付き面をつくっておいた材に、縦に鋸を入れる。

    6分の追い入れ鑿で落としていきます。

    半分まで落としたら、

    板をひっくり返して、反対側から。

    わずかに真ん中を削ってとりあえず出来上がり。
    あとは実際のホゾ穴に合わせて微調整するのですが、これが時間かかる。