以前だったら名古屋くらいまでは車で行って、お客様に家具を届けて夜中に帰ってきたこともあったけれど、今回は無理しないで一泊することにして、翌日は帰りがてら何処かぶらぶらしようと計画を立てる。
というわけで、ここからは納品後のレポートです。

せっかく名古屋まで行くのだから、一度は訪れたいと思っていた熱田神宮に行ってきた。三種の神器の一つ、あめのむらくものつるぎがあるとされている場所。
右折の場所がわからりずらく、神社をぐるりと一周してから東門の近くにある第一駐車場に車をとめる。
まずは境内の真ん中にある案内図を見てみる。

案内図から望む東門。

鳥居に向かって一礼している人はよく見かける。

本宮へと続く参道には神社の歴史を学ぶことができるパネルがあった。QRコードを貼り付けてあるのはいかにも現代風。

令和へとつづく23枚ぶんのパネルを歩きながら斜め読みするだけで、すでにヘトヘトになる。

手水鉢と呼ぶには大きすぎる手水鉢。

クスノキの御神木。
弘法大師が植えたとされる推定樹齢1000年以上とか。

〜だとされる、とか、〜だといわれる、とか、〜だと伝えられる、とか、ものごとを断定しないあいまいな解説が多いのは歴史がありすぎる神社だから仕方のないことではあるけれど、目の前にある樹木は間違いなく立派だ。

しばらく歩いていくと、お祓いやご祈祷をする神楽殿。
その手前、両脇にはただならぬ存在感の塀。

一番印象に残ったのは、これだろうか。
一見すると神社にはいさかか場違いな異物感すらある塀が本宮を囲っているのだが、近づいてよく見ると、土の質感と焼成した瓦のテクスチャーが今のものとは明らかに違う。

なんと450年以上前の建造物、そもそも土ってそんなに長持ちするものなのか。
現代のコンクリートとは比べ物にならない雰囲気を醸し出しているし、職人の手数(てかず)が堆積した密度も感じる。

瓦の質感もいい。

不届き者が壁をほじった跡だろうか、瓦に落書きしている輩もいる。
それにしても、カビが生えたり苔が生えたりしないのだろうか。イタリアの石造りの教会などは足場を組んで外壁の掃除をしている現場をしょっちゅう見かけた気がするけれど、この信長塀にいたってはカラッと乾いている。


星型の絵馬をよく見てみると、美少年、スノーマン、BTSなどの男性アイドルグループの願掛けが多数を占める。無事デビュー出来ますように!とか、ドームツアーが成功しますように!とか、いい席が取れますように!って一体何のこと?
女子たちの推しエネルギーがぐいぐい絵馬から伝わってくる。

いささか食傷気味になって、神様も大変だなぁとご苦労を気遣う気持ちになる。
本宮の裏にある「こころの小径」。
推しのライブチケットが願い叶わずにハズレて、身も心もボロボロになった女子たちに見えてきた。

歴史のある場所だけに、ソテツもアルパカの首のような見たことのないカタチになっている。

これもよく見かけた。
樹皮に生える着生植物のような草だろうか。

アオキの花も咲いていた。

結婚式も行われていた。

巨大すぎる灯籠もあった。

いつまでたっても三種の神器のつるぎが見つからない。
一縷の望みというわけではないが、500円を払って宝物館に入る。
毎月展示替えしているそうだが、信長が奉納したといわれる「蜘蛛切丸」という刀は見た。


歩き疲れて駐車場まで戻ってきた。
だいたい初めからわかっていたことだけれど、有史以前の神話の時代から連綿と続いているとされる「つるぎ」なんて、おいそれと一般公開などしないし、しない方がいい。
万が一それらしいものが仮に実在したとしても、本当に大蛇のしっぽかどうかはもとより、現代科学のメスを入れるがごとくつるぎの組成を調べたりするのは野暮の極みである。そんなものは鬱蒼とした仄暗い場所に重い蓋でもしておけばいい言わぬが花。
実際に神社の中に身を置いて歩いてみれば、あぁ…ここは神様を意識せざるをえない宗教施設なんだとつくづく感じるし、長らくニッポン人がずっと語り継ぎ大事に大事に守ってきた神話や信仰の対象は、否定も肯定もせず静けさの中に気配だけあればそれでいい。

帰りの富士川サービスエリア。
この山もまた信仰の対象でしょうか。