
何年か前に新聞で発表されたニュースを読んで以来、ずっと気になっていたのだが、ついに先日、早稲田大学国際文学館(村上春樹ライブラリー)に行ってきた。
既存の建物をリノベーションしたのは建築家の隈研吾さんだ。
今や売れ過ぎて売れ過ぎて関わっているプロジェクトの全貌すらご自身もきっと把握できていないほどの忙しさであるだろう。
一方、村上さんといえば、もうかれこれ高校時代からずっと読んでいる唯一といってもいい作家で、新刊が発売されたら迷わず本を購入する優良読者の一人になっている。
ただ最近ではどうだろう、長編小説ではおなじみのセックス描写のたびに、男性作者であるおじさん(村上さん)本人が思い描く、年甲斐もないスケベな妄想を読まされている気がして、以前と比べたら少し距離があるだろうか。
近頃やっているラジオ番組も全然聞いていない。
とまあ、そんな感じではあるけれど、事前に予約して先日行ってきました。
午前10時10分の開館前に並んでいたのは合計4人で、ひとりは欧米系の背の高い女性、残る二人は韓国の方だろうか共に女性だった。


入り口正面を飾るゲートは、ドラえもんのガリバートンネルみたいな形状になっている。素材はプラスチックだけれど、屋外での耐用年数は果たしてどれほどのものだろうか。


建物前の植栽が大いに繁茂して手入れが大変そう。
ヤブラン(かなり株多め)、つわぶき、コムラサキ、ツツジ、馬酔木、ユキヤナギ、アオキ、ハツユキカズラ、その他植物に詳しい方に聞かないとわからないもの多数。
いずれも背の低い植物や低木を選んで植えてあり、大学敷地内にある威厳たっぷりの巨大なヒマラヤスギやイチョウ並木の下を歩いてくると、どこか個人的なスケールに感じられて好印象だ。

まず館内に入って一番に感じるのは、随所に木材がふんだんに使われていて、公開されているの3つのフロアにおいては、とりわけ置いてある家具が良かった。

地下一階はカフェスペースになっていて、デンマークなどの北欧スタイルのものに座ってお茶を飲みながら読書ができる。
樹種もチーク材が多いだろうか、この有名な椅子もチークだ。

こちらはオーラ・ニールセン、ペーター・ヴィッツのAXテーブル。
大胆なブックマッチの天板ゆえの、真ん中にはワイルドすぎる白太。


ハンス・ウェグナー、FH-4103。丸テーブルにスッキリと収まるように三本足の椅子。

このカフェの隣には村上さんの書斎を再現した部屋があるのだが、限りなく忠実にコピーしたものではなく、あくまで雰囲気を感じてもらう趣旨のものであると思うが、この部屋の真ん中に置かれてある無骨なテーブルの樹種がわからない。

この書斎机の天板も同様だ。
強烈な板目の表情になってしまうのは、山から切り出した丸太が富士山のような末広がりの形状だったからで、平らに板を製材した際は切り株に近い元口部分がまさにこの木目になる典型的な例。パッと見は杉の巨木だが杉ではない。ニレっぽい気もするし、なんだろう。おそらくセンではないかと予想するのだが、色味がちょっと違う。
しかしそこは天然素材、こんな色味であっても驚かない。

机の上はスッキリとしている。
手前からヤコブ ・イェンセンのスタイリッシュな電話。
新しいアイマック。
ミケーレ・デ・ルッキのロングセラー、トロメオ。
我らがエプソン、カラリオ。

そして何故か書斎の床材はケヤキだ。
着色しているとはいえ、急に和のテイストになっている気がする。
それにしてもこの色味、この木味で、なにか適当な材がなかったものか、ケヤキじゃなくて他に何があるだろうかと、ついつい考えてしまう。

和田誠さんのイラスト。
ジャズの本でもたくさん共作されていました。

海辺のカフカだったか、こんなイメージの表紙があったような、なかったような。
ちなみに、書籍「普請の顛末―デザイン史家と建築家の家づくり」柏木博・中村好文著という本のなかで、村上さんの書斎があるご自宅を設計された佐藤重徳さんのことについて少し触れられている。
小説とは全く関係のない下世話な関心はいつまでたっても尽きない。