昨年末の仕事

何もしていないのに、あっという間に2月が終わろうとしている。
忙しかったのだろうか記憶があまり無い。まさか流行のウイルスに感染したわけでもあるまいし、疲れ果てていたのかヤル気が起きなかったのか、いずれにしても仕事が少し落ち着いたので、少しずつ制作したものをアップしていこう。

写真は昨年末に納品した鬼胡桃のダイニングテーブル。制作の途中経過も少し紹介したでしょうか。
自分がつくったテーブルよりまず先に目に留まるのは、デンマークの巨匠、ハンス・ウェグナーの有名な椅子、コードネームはCH-24、通称Yチェア。その向かいにある2脚は同じくハンス・ウェグナーのCH-23。両方共に今を遡ること70年前にこの世に産み落とされた名作だ。デザインした本人がすでにこの世を去ってもなお、世代を超えて営々とつくられ続けている木の椅子であり、デンマークの自国の経済はもとより国境を超えて海を超えて、世界にあまねく質の良い豊かさを届けるなんて果たしてこれ以上のことがあるのでしょうか。ものづくりは額に汗して手を汚して何かを一生懸命につくることも大事だけれど、やはり本当に価値のあるものは創造力なんだと改めて思い知らされる。

さて、そんな巨匠のつくったものに比べるといかにも自分の仕事が小さく見えてくるが、テーブルはご覧の通り長手方向に6脚の椅子を並べて座れる大きさになっていて、天板は一寸五分の長尺板目の板をハギ合わせて38ミリ程度の厚みに仕上がったでしょうか。幕板の内部に天板反り止め用の吸い付き桟が入っています。
ご主人の希望で、どっしりとしたボリュームのある脚部と、余計なかたちをつくることはせずにシンプルなものにして欲しいと、デザインを決める過程で私とお客さまとのやり取りが何度かあり、最終的なかたちになった。
制作するにあたってはサイズが大きいので取り回しが大変だったことと、材料の裏に小節が少しあり、それをどう扱うかで時間がかかった。
ただ、クルミは家具用材の中では比較的柔らかく加工が容易で、とくに難しい箇所はなかった思う。

テーブル制作を依頼したお客様との出会いのきっかけは、ご主人の奥さんが僕の後輩というご縁で声をかけていただいた。
もうかれこれ20年近く前の古い話になるのですが、私は母校の大学で木工研究室の助手という立場で働いていて、彼女はそのときの学生でした。

怒られるかな、この写真。
当時の木工専攻の学生と先生と講師の面々。
インターネットにおける無自覚な写真掲載は思わぬところで思わぬ結果を招く危険が潜んでいますが、20年も経てばすっかり別人に変わり果てる人もきっといるだろうから、もう大丈夫でしょうか。
右下にいる赤いチャイナドレスを着た女装の男の左。

卒業後に何かの機会で再会したとき、写真家の都築響一さんと一緒にカラオケに行ったことを熱く語っていたのを鮮明に覚えている。
あの時は編集の仕事をしていたんでしたっけ?
あれから19年。
その後、今のご主人と出会って二人の元気な男の子にも恵まれて、自宅を新築したきっかけで、かつての知り合いにわざわざ声をかけてくれました。
学生と助手の関係なんて立場も役割も全く違っていて、実際はそんなに歳が離れていなくても両者のあいだにある溝は深かったと思うし、自分自身も割り切れないと感じながらもどこかで一線を引いていた。
ところが中には珍しい人もいて、当時の立場や関係を軽快にすっ飛ばして、20年という歳月もたった2ヶ月くらいに見なしてさわやかに連絡をくれる人もいる。
ありがたい話である。

時間がかかってお待たせしてばかりでしたが、出来る限り誠実につくりました。
でも、あんまり神経質にならないで、ホットプレートを置いて焼肉してもいいし、酔っ払って赤ワインこぼしたっていいし、なにより家族や友人とテールブを囲んで楽しい時間を過ごして下さい。
嬉しい時も悲しい時も、人生にそっと寄り添うようなテーブルであればいいなぁと願っています。

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