裏刃セッティングブロック

工房には木材を加工する機械がいくつかあるのですが、ここ近年アップグレードしたいなぁと考えているものに、板の厚みを決める自動一面かんな盤というものがあります。
機械といってもピンからキリまであるのですが、使用しているのは松竹梅でいえば梅クラスの機械でしょうか。
主軸を回す2.2kwのモーターが一つ付いているだけで、送り速度の切り替えはアナログな二段階ギア、定盤の上げ下げは手動、贅沢を言わなければそれで十分、松クラスのものなんて中古で100万円近くもするし、あとで鉋がけすればいいんだと諦めてずっと使ってきました。
しかし鉋がけの量が多くなるほど、そして機械を通した後に逆目があった時などは特に、もう永遠と思えるほど果てしなく時間がかかってしまい、もうちょっとなんとかならないかなぁと考えるようになり、機械の裏刃をもっと寄せるためのゲージブロックを制作してもらった。

1/100ミリ単位の違いが仕上がりに差が出てくるのは経験済みなので、神経質に細かい寸法まで図面に描いたけれど、制作していただいた社長さんには難しいんだよと言われてハタと気づきました。
そりゃそうだ、プロだからといって寸法ぴったりに仕上げるのは金属だろうが木材だろうが簡単なことじゃない。

右の2セットは機械に付属しいる既存のもの、なんとなくよそ見しながらダラしなく面取ってますが、頼んだものはキリッとしてます。
いろんな状況に応じて荒加工から仕上げ加工まで、つくってもらったブロックをその都度付け替えて、裏刃を寄せたり緩めたり、最後の手鉋をかける時間が短くて済むように暫くはこれで頑張ってみます。

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清流に住むと言われる、空飛ぶ宝石

工房のすぐ裏には、原野と呼ばれる鬱蒼とした手付かずの森が広がっていて、その真ん中を貫くように農業用の用水路がありました。
水があふれたことなど一度もありませんでしたが、老朽化に伴い、あるいは地方救済のための公共事業か、おそらくいちばんは地域の人が安心してお米をつくれるようにするためのインフラ整備のため、千葉県が主導する水路の拡張工事がいよいよ始まりました。
工事が着工するまでには何年くらいかかったでしょうか、森をなしていたヤブニッケイやハゼ、クロマツ、コナラやイヌマキなどの樹々は大型粉砕機によりチップとなり、法務局にある古い地積測量図をもとにあらためて測量をして、地主さんとの用地の分筆と合筆(私も協力しました)、何かあった時のための証拠として家屋調査もしっかりとして、原っぱになった場所には子供が大喜びしそうなクレーンやパワーショベル、ダンプカーにローラーが次々と勢ぞろいしました。
水の工事なので施工を担当した責任者は何度も菓子折りを持参し、雨が降った翌日はもちろん、休日の朝からも現場をよく見て回っていたのがとても印象的だった。
朝の8時から断続的に続く音と振動はあんまり考えないようにしていましたが、夕方5時には必ず静かになるのでホッとしたのを覚えています。

長く続いた工事も終わり簡単な柵も出来上がって、窓からの景色はすっかり変わり果てたのですが、柵の上に青い鳥をみかけるようになり、ひょっとして、、、と思い図鑑で調べてみると、清流に住むと言われる空飛ぶ宝石、カワセミでした。
警戒心が強いのか、せわしなくじつにすばしっこい動きで、興味本位で近づいてゆくとすぐに逃げてゆく。

手持ちのカメラで目一杯拡大してみる。
バードウォッチング用の双眼鏡やフィールドスコープ、はたまた木工とは全く関係のない望遠レンズが欲しくなってくる。
カワセミと聞けば、山の渓流に住んでいるイメージなのに、海の近くにも生息しているのが不思議といえば不思議です。
それにしても、気まぐれな野鳥や野生動物の姿をドラマチックに撮影するカメラマンの辛抱強さと情熱は、自分がカメラを構えてみるとわかるのですが並大抵のものではないことがよくわかります。

川面を見つめているのでなく、川の中を泳いでいる魚を狙っている様子。

弾丸のように川へダイブして一瞬で小魚を捕まえます。
しばらく鳥を観察していると、だいたい一度の食事で3匹か4匹ほどハンティングして、そしてまたどこかへ飛んでゆきます。

カワセミが見つめていた水面。
おいおい、どこが清流なんだよと突っこみたくなる、ヘドロが沈んでいるような濁流。
あとでカワセミちゃん、お腹下してなければいいんだけど。

ウォールナット、再び

写真は昨年末にお客様のもとへお届けした、二枚ハギのウォールナットのテーブル用材料。
太い丸太を製材して、二枚の板をあたかも本を開くようなかたちで板を合わせることをブックマッチと呼ぶのですが、多少の節とうねりこそあれブックマッチで贅沢に仕上げた天板になった。
頑張った甲斐があってとても気に入っていただき、年明けにもうひとつ注文を頂いた。

制作途中の様子。
既存脚部との関係で反り止めの桟が内側に寄り、しかも短くなってしまうので、普段あまりやらない寄せ蟻にした。

はぎ合わせの桟。
たかだか5センチほどしか叩けないし、木が柔らかいこともあって勾配はつけずにストレートで入れた。

傷つかないように当て木をして、重い玄翁で少しずつ叩いて任意の位置まで追い込みます。

塗装してみる。
見ての通り、前回の板と比べると、節やら割れやら芯やら白太やら、もうこれ以上ないくらい木の表情がてんこ盛りになっています。
向かって右側の板に中央付近まで埋め木がしてあるのが確認できるでしょうか。
そうです、割れていたのです。

肝心のオモテの様子。
今回は板があまり良くないことを承知していただいたものの、ゴジラかキングギドラが火を噴いたようなワイルドすぎる木目で、しかも共木の板とはいえ芯持ち割れすぎの板でなかなか手ごわい仕事でありました。
ブックマッチにするとあまりにも木目のバランスが悪く、あえてそれを避けて矧ぎ合わせた。

向かって左側の板は特に芯割れがひどく、切り落とした端材からもわかるように、すがすがしいほどの状況でした。

割れを修正した箇所、木口の処理。
まず天板の裏側に深く埋め木をして、その後木口をあらためて埋め木してから表を三分の一ほど埋め木した。
木目も合わせようと試みるが、やはり見れば気づく。

高分子イソシアネート系という白い接着剤を使うのですが、ウォールナットくらい色味の濃い樹種は木口の導管に入り込んだボンドが塗装をしたあとでうっすらと浮かび上がってきます。
どうしたって何をしたって入り込んでしまうので、いっそボンド自体に何か着色して色をなじませた方が目立たなかったと思います。

チギリ三連発。
深さは14ミリほどの浅いもので、大きな穴を隠すいわば飾りの化粧です。

やわらかいウォールナットで良かった。
輸入材を扱うことの是非もあるけれど、はるばる自分の手元にやってきた材料くらいは、せめて無駄死にさせることがないようにといつも心がけている。

苗の選び方が問題だ

今から6年前に出会った、雪に埋もれようが霜にあたろうが全くビクともしない丈夫なお花で、冬枯れの小さな庭に彩りを与えてくれるクリスマスローズがすっかり気に入り、勢いづいて追加で苗を買ったりした。

今から三年前の様子。
ポット苗から鉢に植え替えた時の姿をあらためて見返してみると、失敗したなぁとつくづく思う。
細い葉っぱがあちこちからヒョロヒョロ伸びて、いかにも花つきの悪そうな苗を選んでいる。


それから三年経過した姿がこれ。
貧弱な新芽が気まぐれに出たり枯れたりする状態が長く続いて、一向に成長しない株に一度は諦めて捨てようとも思ったが、今シーズンを迎えてようやく花芽が付いた。

丈夫な植物とはいえ、土も肥料も水やりも日当たりも植え替えも、なんとなく気にかけながら三年も面倒をみてるんだから、もっと力強くニョキッっと花茎が伸びて、ゆったりカラフルな花がたくさん咲いて欲しいのだが、お店に並んでいる苗にも当たりハズレがあることを学んだ。
まあ花が咲くことだけが植物ではないけれど、咲かなければ咲かないでモヤモヤするのは、どこかで期待する気持ちや見返りのようなものを求めているからだろうか。

前回の教訓を生かすべく、今年は椰子の木のような力強い姿のものを厳選してみるものの、大丈夫かなと一抹の不安はある。
シングルでもダブルでも何でもいいから、妖しい黒い花が咲いて欲しいと勝手に思っている。

椅子の修理

この写真だけを見て、あっ!あの椅子だ!とわかる人は果たしてどのくらいいるのでしょうか?

美しく接合された笠木とアームの部分が壊れてしまって、再び座れるように修理をするのですが、、、

比較的ねばりのあるナラの木ですが、何十年も経過すると樹脂分が抜けてくるといいますか、脂っ気がなくなるといいますか、素材自体にも寿命があることを教えてくれます。
それにしても無理のある木取りだよな。
繊維も完全に切れてるし、ほとんど木口です。

頑張って接着して、ペーパーをかけて目違いをはらう。

なるべく原型を崩さないように当て木を選んで慎重に作業を進める。

椅子の内側には英語で刻印がされていて、ヨハネス・ハンセン、コペンハーゲン、デンマーク。

クリアラッカーかな?こってりとした塗装が適当にしてあります。
見えない所は見えないという割り切りでしょうか。
見えない所といえばもう一つ。

座面を木ネジで留める金物はなんと、丸ヒートン!
常識にとらわれない柔らかい発想で目からウロコが落ちました。

張り地の仕上げはとても丁寧。
ちなみに座面は約1000Rで思いのほかきついアール。ビーチのロータリー突き板ベニヤです。

出来上がり。
皮の座面も着色し直して、色止めして仕上げました。

ちょうど70年前にデザインされた椅子。
今はPPモブラーという会社で制作されていて、現在でも購入可能です。
すばらしいですね。
デザイナーは一体誰なんですか?